『記念日』

written by しましまさま




















穏やかな午後と静かな夜
僕と君の間に漂う時間と香り

三時のお茶と夜のお茶

ソファーの左右に腰掛けて
とりとめのない話をして過ごす

ただ、それだけの事なのに

最近この家に居る限り、一日に2度
二人の距離が縮まる時間がある・・・
そう思っているのは僕だけだろうか?


 「あのね・・・」


白いカップから離れた
艶やかな桜色の唇から
歌う様に優しく溢れ出す言葉

花の名前も、季節の移ろいも
小さな喜びも、ささやかな幸せも
僕は全て君から教わった

この距離は少しもどかしいけれど
それはとても穏やかで幸せな

僕の大切な時間





穏やかな午後と静かな夜
私と貴方の間に漂う時間と香り

三時のお茶と夜のお茶

ソファーの左右に腰掛けて
とりとめのない話をして過ごす

ただ、それだけの事なのに

最近この家に居る限り、一日に2度
二人の距離が縮まる時間がある・・・
そう思っているのは私だけかしら?


 「あのさ・・・」


言葉少なに躊躇いがちに 
でもたまに笑いながら
囁く様に優しく零れる言葉

生きる意味も、未来への希望も 
小さな喜びも、ささやかな幸せも
私は全て貴方から貰った

この距離は少しもどかしいけれど
それはとても穏やかで幸せな

私の大切な時間



でも今日は・・・
いや今日なのに・・・
何故か向かい合って座ってしまった

どうしたのだろう・・・
どうしたのかしら・・・

この位置に慣れないせいか
さっきからずっと正面で

カップを大切そうに両手で包んで
カップを何度もソーサーに戻して

少し俯き加減の君が 
少し緊張した貴方が

湯気の向こうに座ってる姿に
戸惑ってしまう


 「あのさ・・・」
 「あのね・・・」


交互になにか言い掛けて
交互にカップに口をつけて

ふたりのあいだを時間と香りが
優しくゆっくりと通り過ぎてゆく


これを飲み終えたら伝えよう
これを飲み終えたら伝えたい

カップから掌に伝わる 
このぬくもりのような

心に芽生えた あたたかな気持ちを

二人の時間がもっと重なるように
二人の距離がもっと近づくように



ふと顔をあげると
緩やかな湯気の向こうに

君が 
貴方が

僕を 
私を

見つめている
瞳に映してる


 「今日は・・9月3日だね・・・」
 「本当ね・・9月3日よね・・・」


9と3が寄り添う、年に一度の日だから
それを勇気に変えて、今日伝えよう

大切な君に
大好きな貴方に


このあたたかな気持ちを


カレンダー上のただの一日が
二人だけの特別な記念日の

最初の1つになる様に


 「あのさ・・・」
 「あのね・・・」


同時に零れた、同じ言葉が・・・

今・・・静かにかさなる






Fin









<Tim より>
しましまさんの、サイト1周年お持ち帰りSSです
こんな素敵なSSが「粗品」だなんて〜!!
シリアスもコメディも素敵な、本当に楽しいサイトさまなのです。
これからもどうぞ末長〜〜〜くサイト続けてくださいねー!
楽しみにしております^^


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素材:a day in the life さま