Written and designed by Ayuka sama.
This novel was released on "Sweet Brier Drop" FIRST in 24 February 2005.






The Dying Swan




この頃、フランソワーズの帰りが遅いようだが・・博士が心配そうにジョーに尋ねてきた。
BGとの戦いが終わり、フランソワーズはバレエを再開した。
バレエを再開したフランソワーズはまるで水を得た魚のように毎日のレッスンに通っている。
ところが、ここ最近、夕食の時間になっても帰宅せず。
ほぼ、毎日夜中に近い時間に帰宅していた。ひどい日はレッスン場で朝を迎える事も・・


「今度の公演の役が決まったと喜んでいたからその練習だと思うのですが、僕も心配で」
かと言ってフランソワーズに練習を控えろとは言えない。
今の彼女にとってバレエはすべてなのだから・・
「・・身体が心配じゃが・・」
博士の心配もわかる。いくらサイボーグだと言っても、殆どが生身に近いフランソワーズ
普通の人間と同じように、無理をしたら身体が故障する事可能性がある。
「さりげなく、博士が心配している事、僕から伝えます。」
「頼む・・」


その夜、遅く帰ってきたフランソワーズが部屋に入るのを確認するとジョーは部屋をノックした。
「フラン、開けるよ」
「只今、ジョーどうしたの?」いつもの口調で喋っているフランソワーズだったが、顔色が酷く悪い
ジョーは眉間に皺を寄せながらフランソワーズの傍により手をフランソワーズの頬にあてた
「顔色が悪い。無理してるんじゃないか?博士も僕も心配している。」
「ありがとうジョー。でも疲れ顔でいいのよ」
「・・どういう事?」
ジョーが不思議そうに聞くと、今度の配役は『瀕死の白鳥』で死んでいく白鳥の役だから
少し、顔色が悪い方が言いと言うのだった

「嘘をつかないで!そんな事、今までした事ないだろう・・」ジョーはフランソワーズの嘘を見抜いた
彼女は嘘をつく時、必ず一瞬僕の視線を外す。

「ジョーにはバレるわね・・やっぱり・・」そう言ったフランソワーズが何故毎日遅くなるか話始めた。

『瀕死の白鳥』はバレリーナにとって難しい役の上、今回の振り付けの先生がとても厳しく
自分の踊りに納得してくれず、毎日残って練習やイメージトレーニングをしていると言うのだ

「私に何かが足りないって先生は言うのだけど・・」その何かがわからないフランソワーズの瞳から涙が
零れてきた
「だけど絶対踊りたかったの。この役を!バレリーナの憧れの役なの・・」
「フラン・・」”フランなら大丈夫だよ”とジョーはフランソワーズの髪を撫でながら
眠りにつくまで抱きしめていた。


フランソワーズの踊りに納得してくれないのか・・彼女の帰宅が遅い日々が続いた
公演まであと3日と迫って来たある日、フランソワーズは昼前に帰宅してきたのだ。
博士が”どうしたんじゃこんな時間に・・調子が悪いのか?”と尋ねると
逃げるように地下へ駆け込んで行ったと言う
レースの打ち合わせに行っていたジョーが帰ってくるなりオロオロしながら博士が告げた

地下にある部屋は博士がバレエを再開したフランソワーズの為に稽古場として作ったのだ。
前面に鏡が貼ってあり壁にはバーが設置されレッスンもできる
教室と同じ広さではないが、フランソワーズ一人では充分レッスンができる広さだ
もちろん防音設備も整っていて、レッスンに集中できるように、中からも鍵が掛けられる

博士から話を聞いたジョーはすぐに地下に向かった
念の為、カギを持っていったが必要なかった。鍵は掛けられていなかったのだ
ドアを開けると、うずくまるように座って泣いているフランソワーズの姿があった。

「博士から聞いた・・何があったのか僕に話して・・フラン」
震えている肩にそっと手をやりフランソワーズの顔を覗き込む。
ジョーが来るまで、散々泣いたのか・・泣きつかれた顔になって少し冷静さを取り戻していたようだった
「・・・練習に来なくていいって言われちゃった・・・」
「・・・・・先生に!・・」


教室でいつものように『瀕死の白鳥』を通しで踊っていたら
突然、先生によって中断された。そして・・
「フランソワーズ・・君の踊りの技術は完璧だが、表現力がダメだ・・
君の踊りは”生きたい”という気持ちが伝わってこない。
”生きていたい”という気持ちを最後まで貫き通しながら死んでいくんだよ。
しばらく自宅でイメージしてくるんだ。自宅でも基礎をしていれば技術的には問題ないと思う
公演当日、早めに来てくれ、『瀕死の白鳥』は最終種目となっているから・・」

「・・えっ!ちょっと待って下さい。私は生きたいと表現しているつもりですが・・」
「判断するのは君じゃない観客だ!それを忘れないように!公演日には早めに来る様に」と


「フラン・・僕はバレエの世界は解らないがきっと先生はフランならできると思って言ったんだと思うよ」
まるで子供をあやすように髪を撫でながらジョーが言った
「ねぇジョー死ぬ時って、何を考えるのかしら?愛する人の事かな?」
「もちろんそれもあると思うけど、死にたくないと、生きる希望を捨てないんじゃないかな?」
「えっ?」
「僕の場合だけど最期まで諦めないと思うよ。最愛の人がいるなら尚更だね」

ジョーのそのその言葉ですとんと心に何かが落ちてきた
”そうよ!・・死ぬつもりなど全く考えてないとしたら・・・”
フゥ〜と深いため息を吐きながら「ジョーありがとう・・・解った私・・やれるわ」
泣き顔は消え、いつもの笑顔が戻ってきた
「じゃ、気分を変えて練習再開だね!何か飲み物持ってこようか?」
「ありがとう・ジョー。スポーツドリンクをお願い。冷蔵庫に入っているわ」
「OK!」
ドリンクを取りに行く為、その場を立ち上がりドアへ身体を向けると
博士が慌てて部屋に入って来た。

「・・博士?」
「コ・・コズミ博士から連絡が入って・・」
事件が起きた。

「コズミ博士が開発中のデータを盗まれたんですね」
「そうじゃ。」
「犯人の特定は?」
「今、ピュンマが情報を集めている」
「開発途中のを盗むなんて変な泥棒アルね」
「開発途中だからこそじゃ、その後、善にも悪にもできる。」
その夜、メンバー達全員がジョーの連絡によってギルモア邸に集まった

「コズミ博士が人質に取られなかったのが幸いだな」
「思いっきり暴れるぜ!」
「・・黒幕は誰だ?」
メンバー達の推測が飛び交う中、情報が取れたとピュンマが部屋に入ってきた。


黒幕はコズミ博士に開発を依頼した企業のライバル会社。
プロを雇ってコズミ博士のデータを盗んだようだ。
その開発が成功すれば、ライバル会社にとっては莫大な損害になる。
まして、その開発を悪に使う事になってしまえば、地球の自然が破壊される

「相手が普通の人間だとわかればやりにくいな」
「そうかアルベルト?さっさと終われるんじゃないか?」
「機械相手なら容赦なくできるが・・」

「犯人達は機械人間じゃない。殺すわけにはいかない。」
リーダーであるジョーが言い。それに黙って頷くメンバー達
「作戦通りに・・じゃ、行こう!」

作戦は至って簡単だった。
ライバル企業と犯人達が落ち合う場所もピュンマの情報によって特定できた
難点といえば、殺さず警察に突き出す事


まず007がねずみに変身して、落ち会っている場所に潜入し、
その後を009・003・004・002が続き
006・005は出入り口を固め008は情報収集にあたった


「ジョー人数は思ったより多そうだわ・・あ、そこに3人いるわ」
「・・右の奥の部屋に・・2人程隠れているわ・・」
「了解・・フラン此処で待機して指示を送って欲しい」
「わかったわ、気を付けて」

ジョー達の突然の襲撃に反撃してくる、犯人達だったが、
所詮、ジョー達にとっては赤子の手を捻るようだった。
「お宝あったぜ!」とディスクを片手にジェットがメンバー達に見せた。
「了解。戻ってピュンマに確認してもらおう!」
来た道を戻ろうとメンバー達が走りだした時
入り口付近から
ズトーン!ズトーンと銃声の音が聞こえた


入り口付近では、フランソワーズがジョー達に指示を送っていた。
すでに、ここに居た犯人の仲間は倒しロープで縛られているはずだった。

無事完了したよと言うジョーからの通信にほっとしたフランソワーズが人の気配に気が付き振り向くと
捕らえてたはずの一人が銃えを構えてフランソワーズに向け発砲した。
”いけない・・避けなきゃ”そう思った矢先に眩暈を起こした。
普段のフランソワーズなら簡単に避けられる射程距離のはずだった。しかし
今日まで、殆ど睡眠と食事もまともに取らず、バレエの練習に明け暮れてた
フランソワーズの身体は限界が来ていたのだ。

2発の銃弾が避け切れなかったフランソワーズの腹部と胸部を貫いた。
「・・ぐぅ・・うっ・・」身体が引き裂かれるような痛みと共に意識が遠のく

銃声の音に気づき005がすぐに入り撃った仲間を捕らえたが、
フランソワーズはすでに血の海の中で意識を失い倒れていた。


「フランソワーズ!!」 奥の部屋から駆けつけ、その姿を見たジョーの悲痛な叫び声が響き渡った


僕のミスだ・・僕がフランソワーズを一人にしたから・・
あんなにがんばって練習していたのに・・僕が・・潰してしまった
腕や身体にチューブを付け、酸素マスクをしベットに横たわっているフランソワーズを
ジョーは両手を合わし祈るような姿勢で、見つめていた。

手術が終わり、博士は危険な状態は脱出したがしばらくは絶対安静だと告げた。
結果。公演はキャンセルさせるしかないと・・



気が付くと闇の世界で私ひとり・・・

・・・・ここは?・・・・・・

・・ジョーといた筈・・・・・

・・違うわ!私は生きているはず・・・

・・・・戻りたい・・踊りたい・・




「・・気が付いたかい・・」
眼を開けると、、ジョーの悲痛な顔が私を覗き込んでいた。
私は・・生きているの?それとも夢?
「・・・フラン・・??痛いのか・・??」
ああ・・夢じゃない・・私は生きている
「・・ジョー・・私・・」その声にジョーは深いため息と共に、握り締めていた手をさらに強く
「よかった・・フラン。僕のせいだ・・」
そうだった。私はコズミ博士の盗まれたデータを取り戻すため、・・そして、撃たれた。

何故、ベットに寝かされている事が把握できたフランソワーズは酸素マスクを外し慌てた声で
「今日、何日!」
「え?っ 17日だけど・・」
「17日!・・起きるわ!」と言って身体を起こそうとした。
何をするんだ!と強い口調でジョーは起き上がろうとするフランソワーズを制止する。

「公演は明日なのよ!こんなところで私・・」
「今回の公演はキャンセルするんだ!博士も絶対安静だと」
フランソワーズはその言葉を否定するかのようにジョーの腕を握り締め
「やっと、わかったの・・お願い!痛み止めを打ったら何とかなるわ!お願いジョー」
ダメだと言うように首を横に振る
「お願い!!・・今日は大人しく寝ているわ・・けど明日・・出番の時だけでいいの!」
・・フランソワーズ・・ジョーが辛そうにフランソワーズを見つめる
僕だって、君ががんばっていた事を知っている。躍らせてあげたい。けど・・今回は・・

辛そうな顔をするジョーを見ていたフランソワーズが突然、身体に装置してあるチューブを
抜こうとしていた。
フラン止めるんだ!チューブを抜こうとする手を阻止するジョー
残っている力を振り絞りチューブを抜こうとするフランソワーズ
二人はベットの上でもみ合いになっていた。
ベットの傍にあった医療器具がガシャンと音をたて床に落ちてく
その音を聞きつけ慌てて部屋に入ってくるギルモア博士の姿。

「何をしているんじゃ!」二人のもみ合いを制止しに入り込む
博士!フランソワーズを!
「・・お願い!聞いて!博士!・・」息が荒く上がっている、
それでも博士に痛み止めをと頼むフランソワーズ

「フランソワーズの希望はわかった。じゃが・・」
「お願いします。博士。出番の時だけ・・その時間だけでいいの・・」
「・・・・」
「博士、僕が傍にいます。何かあったらすぐ僕がフランを」唇を震わせながら悲痛の顔で博士に言う
「ジョー・・」
「わかった。今日は絶対に大人しくするんじゃぞ、」薬を用意すると言って部屋を後にした。

「・・ご・ごめんなさい・・ジョー、我侭だとわかっているわ・・でも・・」
「・・喋らないで・・体力つけなきゃ駄目だろう?・・明日、舞台に立てないような状態だったら
すぐに連れて帰るから」
ジョーが自分の我侭をどんな気持ちで聞き入れてくれたか痛いほどわかった
最後まで、踊り通せるかもわからない・・途中で倒れるかもしれない
でも、何かを掴んだ今だからこそ倒れようが・・踊りたい

翌朝、アルベルトが運転する車にジョーに抱かれてギルモア邸を出発したフランソワーズ
負傷した所は出血しないように包帯を何重にも巻着付け、
ギルモア博士も医療器具セットをもって同乗した。

「大丈夫なのか?」舞台袖で心配するアルベルト
「・・多分・・博士が今回の為に強めの痛み止めを打ったらしいけど・・」
「多分って・・何かあったら遅いぞ・・あんな状態の身体で・・」
「・・フランの眼が違うんだ・・気迫が・・今はフランを信じるしか・・」

会場に着くなり、虚ろだったフランソワーズの眼が気迫に満ちた眼に変わっていった。
精神力だけで、持っているのかもしれない。
改めて、ジョーはフランソワーズがこの舞台にかける情熱を感じた
「取り合えず、俺はいつでも車を出せるようにエンジンを掛けて置くから」と言いアルベルトが
会場を後にする。

衣装に着替えたフランソワーズが舞台袖にやって来た。すぐに、傍に駆け寄るジョー
「大丈夫かい?」
「・・大丈夫・・!踊るわ。」
最後まで踊れるお呪いと言ってジョーはフランソワーズの唇にキスを堕とす。

サン・サースの曲が流れ・・フランソワーズの踊りが始まった
引き込まれていく、幻想の世界
フランソワーズが息絶えていく白鳥に見え。思わず、駆け寄りたい衝動に駆られる。

やっと、わかった・・私は白鳥は死ぬ事が最初からわかっていると解釈していた。・・
”・生きていく欲望”そう。この白鳥は死ぬつもりなど考えていない
死の最後まで、羽を広げ・・大空に羽ばたく・・・

フランソワーズが最後のポーズを決め・・踊りが終わった、
  会場は・・一瞬、水を打ったようになりそして、、いっせいに歓声が沸き起こる
観客すべてがスタンディング‐オベーションとなって、涙を流している観客もいた。

フランソワーズが立ち上がり、観客席に両手を広げてお辞儀をした。と同時にゆっくり段幕が降りてくる。

段幕がすべて降りたのを確認したと同時にフランソワーズはその場で意識を失った。



ーーーー****

ギルモア邸からすぐ傍にある海辺でジョーとフランソワーズの姿があった
「フラン・・風が出てきた。戻った方がいい」
「・・・もう、、少しだけ・・」
「駄目だよ、やっと歩けるようになったんだ。今回の我侭は却下だね」と言いながら
フランソワーズの肩に羽織っていたストールを掛け直し。肩を抱きギルモア邸に足を向ける
「・・踊れてよかった・・お呪いが効いたのね」
「・・僕はもう『瀕死の白鳥』はみたくないな・・」
「??何故?」
「・・フランが踊っているとわかっていたけど、本当にフランが死んでいくように見えたんだ・・」
そう答えるジョーの顔を見て、クスクス笑いながら・・
「踊りがそう見えたなら大成功ね!でも、次の役はジゼルよ、また死んで妖精になっちゃうのだけど・・
ジョーは舞台見たくない?・・」

怪我も完治していないのにもう次の配役が?不思議な顔をしたジョーに
フランソワーズは”ジゼル役を指名する。”と先生から手紙が来たと説明した。

「公演は来年。パリよ・・」
「来年、パリ?・・じゃ、見に行く事になるね。僕も来年はレースでヨーロッパが主になる。」

「本当に!」
「・・うん・・」
「嬉しいわ、ジョー・・来年も舞台が終わったら海が見たいわ」
「パリの海かい?」
どこの海でもいい・・あなたと見れるなら・・

きっと、遠い未来に二人で海を見られない日が必ず来るだろう。

生きたいと希望を持っても最期の時は必ずくるだろう。
その時は、ジョーあなたの腕に抱かれながら、白鳥のように羽を閉じたい


<Fin>






♥あとがき
『瀕死の白鳥』はご存知の方もいらっしゃると思いますが、
アンナ・パヴロワ(1881〜1931)が初演し伝説となった作品です。














コメント by Tim

『The Dying Swan』は、あゆかさんのサイト「Sweet Brier Drop」さまが閉鎖(涙〜)されたので、
「ぜひください」とお願いしていただいてきた作品です。
しなやかに生きるフランソワーズがとても好き。
そして、今思えば、私はこのSSであゆかさんのバレエ好きを察知したのでした、笑
やっぱり好きだなあ、あゆかさんのバレエもの♪
これからも書いてくださいね>あゆかさーん^-^ 引退には早いですわよ♪♪

でもってこのページは、あゆかさんのご好意により、デザインを(ほぼ)そのまま使わせていただいてます。
(ほぼ、というのは、私が上と下にこうして文字を挿入したのでそれ以外は、ナノデス)
あゆかさん、ありがとうございます〜>_< & これからも書いてくださいねっ♪


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